2010年11月アーカイブ

前回紹介した短歌の作者は、そのマロニエの実の土をうつ音に、故郷の家の袈庭などで耳にした、あの栗の実の落ちる音を懐しく思いおこし、しみじみとした旅愁を感じたのかも知れません。


二首目の作者は、アフリカ東部のタンザニア・ケニア・ウガンダにまたがる世界第二の大淡水湖、ビクトリア湖の湖畔に来ています。


この赤道直下の湖のほとりにも、日本の秋を想わせる小さなトンボが沢山飛びまわっていて、歩いてゆく作者にまといつくように人なつっこく従いてきます。


故郷日本からすれば、まさに地の果てとも言えるアフリカの土を踏みながら、この作者も群れとぶトンボに、はるかな郷愁をそそられているようです。


この歌にしろ、先のマロニエの歌にしろ、そこに流れている拝情は、いかにも日本的ですよね。


もしかしたら、人は遠くの外国に行けばゆくほどに、むしろかえって日本人としての性格をあらわにし、「短歌的拝情」に身をよせたくなるものなのかも知れません。

前回紹介した短歌の二首目の作者は、アジア大陸の山岳地帯の空を飛ぶ旅客機の窓から、世界最高峰のエベレストを望み、その機内のどよめきをうたっています。


「人は・窓に・雪に・かがやく」の小きざみで、たたみかけるような表現の上に、その時の緊張感があらわれています。


ただ「人は......見る」という叙述は、やや客観的です。


この作者はあるいはこの航路を、しばしば通っている、そうした生活者なのかも知れません。


さて次は、「海外の旅の歌」をテーマにしたものです。

・ノートルダム寺院の園に秋日照りマロニエの実の土をうつ音 


・ビクトリア湖畔に群らがる小蜻蛉旅人我に従いて飛ぶ 


・・・某雑誌にも、最近はこうした海外旅行詠がかなり見られるようになりました。


一首目は、パリにある有名なノートルダム寺院を訪れた作者が、明るい静かな秋の日差しの中で、マロニエの実の落ちる音を聞きとめた、そうした歌です。


マロニエは、トチノキ科の落葉喬木で、イタリアやフランスでは、この木が街路樹として植えられており、ひとつの風物詩として旅人の旅情をそそります。


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